伊集院光の『深夜の馬鹿力』で「空脳アワー」というコーナーがあります。
 頭の中がこんがらがったことや、妄想したり、勘違いしたことを面白おかしく語っていいるのです。


 こんな感じのお便りが続きます。

「頭ではわかっていても、777円に1,000円払うと、お釣りが333円戻ってくる気がする。」

 分かります、分かります(笑)。

「中学生の時に反抗期になって母親と大げんかし、壁を蹴って大穴を開けた。世界地図をガムテープで貼って目隠しをしてあった。
 数年後、その地図をはがしたら、穴がない。直したとしても壁の色が違うはず。母に話しても心当たりがなく、反抗期すらなかったらしい。どちらが正しいのか。」

 こうなると、ちょっと不思議というか怖いですね。記憶の勘違いなのか、妄想なのか。
その中で特に印象に残っている話を。


 小学校一年の遠足での話のことです。
 遠足の目的地から学校に帰る途中、中継ポイントの神社が見えてきて、友達とおやつの話で 盛り上がっていました。

 すると突然後ろから「おまえは◯◯(私の名前)だろ」との声。

 びっくりして振り返るとそこは知らないおばあさんが立っていました。

 私は必死でそのおばあさんのこと必死に思い出そうとしましたが、全く記憶にありません。 
 近くにいる先生に「◯◯君、そのおばあちゃん、知ってる人?」と聞かれたので、もう正直に「知らない人です。」と答えると、おばあさんが「忘れちまったのかい?私はお前のおばあちゃんだろ」と言ってきます。
 その言葉を聞いて私は完全にパニックになってしまい、頭が真っ白になってしまいました。

 私の家と祖母の家はわりと近くにあり、毎週のように遊びに行きます。そんな祖母の顔を私が忘れる訳がありません。

 周りにいた友だちたちは、私がトボけたと思ったらしく「おいおい、自分のおばあちゃんの顔を忘れんなよ。」と笑いながら突っ込んできました。

 しかし、そのおばあさんの顔とは、いつも見ている祖母の顔とは似てもにつかない知らないおばあさんなのです。

 とりあえず、神社まで行き、休憩することになり、私はそのおばあさんを警戒して、ある程度距離をとって座り休みました。
 おばあさんは先生とベンチに座り、なにやら話をしていますが、距離をとっているのと、周りが騒いでいるため何を話しているのかわかりません。

 私は休憩中にずっと 、
「昔ばなしに出てくる山姥とかだったらどうしよう」とか思い、そのおばあさんの事で頭が一杯で楽しみにしていたおやつも喉を通りません。

 そして「流石に学校までついてくることはないだろう」と休憩が終わることを、今か今かと待っていました。

 休憩が終わり、やっとこの恐怖から開放されると、先生の下に集まると、 先生が

「◯◯くんはここで抜けておばあちゃんと帰りなさい」と言ってくるのです。

 私は「先生は休憩中にあのおばあさんに何か吹きこまれた!このままじゃ一生家に帰れなくなる!」と思い、

「僕もみんなと帰ります!僕もみんなと帰ります!」と涙目になりなが必死に訴え、なんとかおばあさんとは帰らずにすみました。


 神社から出発する時、おばあさんは、僕に向かってずっと手を降っていました。

 それを見て、私は怖さと同時に、おばあさんが少しさみしそうに見えて、なんだか悪いことをしてしまったような罪悪感も感じたことを覚えています。

 家に帰っても親にはその事を言えず、今でもあのおばあさんのことは謎のままです。


 と、こんな内容でした。伊集院光は「超怖くね? もし、一緒に帰っていたらなんだったろうね。なんだろうね・・・・。」と語っていましたが、よく考えると怖い話ですね。

 もし、脳の誤変換で知り合いが他人に見えてしまったら、それは病気とかも含めて怖いですし、もし、他人だとしたらそれも怖いですね。
 個人的には神社の近くでの話というところに怖さを感じてしまいました。
 一緒に帰ることになっていたら、どこへ帰ることになったのでしょうか・・・。