サンポール後藤さんのラジオから。

 末期のガンで、抗癌治療を受けて死の淵から生還した人から聞いた話だそうです。気管内挿管をされて、寝たきりで意識が混濁していたときの話なのですが。




 夜中に目が覚めたら、隣に背広をきたおじさんが立っていた。
 この世の人ではない、そして使いで自分を迎えに来たのだと、なぜかわかった。不思議と怖くはなかった。

「あぁ、お迎えに来たんですか?」「いえ、まだちょっと早いです。」
「あと、どのくらいですか?」「あと6日あります。」という会話をした。
いや、実際は管内挿管されているので喋ることはできないが、なぜか心の中で会話ができた。

 その人は、そのまま眠りに落ちた。

 次の日も夜中に目が覚めるとその人が立っていた。

「あと5日です。何か恐いこととか、不安なことはありますか?」

そう聞かれて考えてみたが、今の自分には恐いことも、この世の未練もない。

「なにもないです。」
「ああ。それはよかったですね。じゃあ、明日また来ますね。」

そして、また眠りに落ちる。

 その人は、その次の日も、そしてまた次の日も来て同じ質問をしてくる。

 あと2日というとき、その人はいつものように聞いてきた。

「あと2日ですけど、どうですか?」
「本当に何も怖くないです。死が、こんなに良いものとは思いませんでした。」
 
「そうですか、よかったですね。じゃあ、あと2日ですから”答え”をいいますね。」

「答え?なんですか?」

「それはね、この世界は◯◯◯なんです。」

ワンフレーズのようなとっても単純なことを言われた。

 その言葉を聞いた瞬間に、その人は、今まで疑問に思っていた、この世の理不尽なことや疑問が全部がわかってしまった。世界中の貧乏も差別も貧困もその理由が全部分かって納得できた。全部を許せて、全部を納得できた。

 その人は正義感の強い人で、義憤を感じて運動をしていたこともあったが、その単純な一言で、全部がわかってしまったのだ。

「なんということか!これが答えなのか。死ぬ前に全部わかってよかった・・・。」

圧倒的な多幸感。これで本当に幸せな気持ちであの世へいくことができる。

 そしていよいよ予定の前の日。その人はまたベットの傍に現れた。珍しく少し不機嫌な様子だった。

「明日ですよね。」「いや、実は手違いがあって、ちょっと変更がありました。」
「え?どういうことですか。」「まあ、いいから。」と、頭にポンと手をおかれた。

 その瞬間に、先ほどまでわかっていた「この世界は◯◯◯」の◯◯◯のところだけぽっかり忘れてしまった。

 その後は、驚異的にどんどん回復して、その人は死の淵から生還を果たした。

 「あの時は確かに聞いたんだけど、完全に忘れてしまった。単純な言葉なのにどうしても思い出せない。言われた直後に、この世界の差別や貧乏やすべての理不尽と思われることに全部納得できたのに。今までの怒りや不満が氷解した一言だったのに。思い出したくてもどうしても思い出せない。不思議なもんだなあ・・・。」

それきり、背広のおじさんと会うことはなかった。


「この世は◯◯◯」ですべてが分かるらしいです。
 考えてみましたが、なんなのでしょうか?気になりますね。
 その答えをつかむためにこの世界に生まれてきているのなら、間もなく死ぬ人にだけ先に答えを教えてもらえるのでしょうか。
 答えを教えてもらいたい気もしますし、聞くのが恐い気もします。

 よく夢の中で面白い出来事があって、その時は夢の中で大笑いしていて、朝起きたら、なんでこんなことで大笑いしていたんだろうと思うことはよくあるのですが。

 鎮痛剤などの副作用が見せた幻覚なのかもしれませんが、気になる話でした。