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本当は恐い?座敷わらし


本当は恐い?座敷わらし(ザシキワラシ)

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市松人形の童女の姿で語られることが多い「座敷わらし」

 管理人の実家は岩手県にありますが、岩手県に伝えられる話に「座敷童子(ザシキワラシ)という精霊がいます。
 柳田國男説話集『遠野物語』で全国的に知られるようになりましたが、旧家の座敷や蔵に住んでいるとされ、いる間はその家に富をもたらし、その家からザシキワラシが出ていってしまうとその家は没落するという話です。
 近年では、
ザシキワラシに会える宿として岩手県の「緑風荘」がテレビ番組や雑誌に取り上げられたことでも知られていますね。名をあげる著名人たちが泊まった宿としても有名でした。(平成21年10月4日の火事により全焼)
 さて、今回は、その童女の姿として現れる可愛らしいザシキワラシは、実は恐ろしい存在であったという話を。


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女の子で描かれることが多い座敷童子『鬼灯の冷徹』9巻より


 この「
ザシキワラシ」ですが、東北の伝承をまとめあげた説話集として明治43年に発表した『遠野物語』で全国的に知られるようになりました。
 『遠野物語』といえば、柳田國男が民間に伝わっている伝承に焦点を当て、聞いたままの話をそのまま編纂したこと、それでいながら文学的な独特の文体であることが高く評価されて日本民俗学の発展に大きく貢献したといわれる書物です。
 そこでは、失われた日本の牧歌的なイメージや、ファンダジー色のある遠野の姿が描かれていますが、この遠野に伝わる数々のあやかしの話を柳田國男に紹介した人物がいます。
 それが、佐々木喜善という人で、彼が柳田國男にこの遠野の物語を紹介しなければ『遠野物語』は生まれなかったと言われています。佐々木善喜こそ、民話を採取し、それを編纂するという作業を行った先駆者であるのですが、彼の集めた話の中に出てくる「ザシキワラシ」は、実は柳田國男の「ザシキワラシ」とは天と地ほどに異なるのです。

 たとえば、佐々木喜善の集めた「ザシキワラシ」ではこのように描かれています。

「宮守村の太田某の土蔵から何者か唸るような声が2、3日続いた。その頃から座敷にザシキワラシが出始めたのである。 
 身の丈は1尺2,3寸(30cm強)ほどで、座敷のうちをとたりとたりと動き回る。童子といえば童子だが、色は黒く、なんだか獣みたいである。とその家の人たちは話したという。

 土淵村の北川という奥座敷に叔父が泊まりに来て寝ていると、襖のすき間から、細い長い手が出て自分を招くような手つきをしてきた。
 この手は俗に細手長手をいって、吉凶禍福をつれて人の家に現れるものなので、ザシキワラシの一種だからということで同じ所に記録しておく。」
(『黄昏綺譚』高橋克彦著より)

 全然違いますね。佐々木喜善はこの話も柳田國男に紹介したはずなのですが、柳田國男が『遠野物語』に採用しなかったということです。
 いえ、むしろザシキワラシとして集めた話は、遠野物語のような童女の可愛らしい姿の方が数は少ないのです。可愛らしい姿の方が特殊で、ひと通り読めばザシキワラシに対して良いイメージが湧いてこない不気味な存在、恐いイメージなのです。


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『黄昏綺譚』より

 この違いはどうして生まれたのでしょうか。そう、柳田國男は自分のイメージにそぐわない話は却下し、牧歌的日本の復元を目的とした遠野へのオマージュになっているのです。そこには等身大の遠野の紹介ということは無縁でした。いわば、柳田國男の世界が出来上がっているのが『遠野物語』の真相なのです。
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 当然、学者としての佐々木喜善は、公平で忠実でないこの記録集とはいえない遠野物語に対し抗議の声をあげ、真実の遠野物語ともいうべき『聴耳草紙』をまとめあげて発表しました。

 二人の民話へのスタンスの違いなのですが、柳田國男は民話をひとつの文学として認識し、佐々木喜善は公式記録を持たぬ民の声と考えていたのです。

 では、このザシキワラシの話に隠された真実とは何でしょうか。次回は佐々木喜善の記録したザシキワラシから何が見えるかご紹介していきます。

 

座敷童子に会える宿として人気の「緑風荘」
 
『緑風荘』は平成21年10月4日の火事 により、全焼してしまいました。


緑風荘わらし神社のHP

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 消失した槐(えんじゅ)の間
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