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東京ローズの謎。彼女は何故、極秘情報を知っていたのか。

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◆甘美で絶望的な内容を語る彼女。それは日本のプロパガンダ放送だった。

 「太平洋の孤児さん、貴方が狐の穴みたいなところで戦っている間、貴方の奥さんや恋人はきっと淋しい思いをしているわ。そんな女には必ず誘惑者が現れるのよ。初めてのデートではキスまでするのかしら・・・」


 それは、故郷に残した妻子や恋人たちを思い出させる甘い誘惑。死と隣り合わせの任務に向かう米兵たちの気持ちを郷愁と絶望、そして士気を下げ、厭戦の気持ちへと誘う内容でした。
 このラジオの発信源は東京都の千代田区。NHKの海外放送部門ラジオ東京です。日本は米兵向けに戦意を喪失させるプロパガンダ放送を行っていたのです。
 流行りの音楽とニュース、そして短いトークを含むラジオ番組『ゼロアワー』。その番組はすべて英語で報道され、最前線で戦う米兵たちをあっという間に虜にしてしまいました。その番組の選曲のチョイスも抜群で、その構成センスは日本のプロパガンダ放送であるにも関わらず、多くの米兵たちを釘付けにします。
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映画「父親たちの星条旗」より

 しかし、最大の魅力はなんといっても、音楽の合間に流れる女性DJの声。
 その声は、一回聞いただけで男たちの心を虜にするするような、甘くハスキーでセクシーで、悩ましげな不思議な魅力を持つ声だったのです。
「可哀想な坊やたち。貴方たちが狐の穴より居心地の悪い塹壕で眠っている間に、貴方たちの奥さんや恋人は他の男とあたたかいベッドで眠っているわ」

「アメリカ海兵隊の皆さん、大きなお船の中はさぞかし快適でしょうね。でももうすぐ海の底に沈んでしまうと思えば可哀想な気もするわ。今も特殊潜航艇があなたがたの船のすぐ下に忍び寄っていますよ。それに体当たりの飛行機も数切れないくらい用意されているわ」


 この絶望的な内容とは裏腹に、女性DJの魅惑的な声は、いつも間にか「東洋の魔女」「東京ローズ」と呼ばれるようになります。何故バラなのか。それは、その内容にトゲがあるから・・・。

◆東京ローズは何故、米兵たちに人気があったのか。
 
 東京ローズは、その内容が米兵たちの不安を煽るものであるにも関わらず、圧倒的な人気がありました。
 それには、彼女の声そのものが魅力的であったということもありますが、それ以外に、予言めいたことも語られていたからです。
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 ある日の午後、硫黄島を包囲して沖合に停泊している第7艦隊の船内にゼロ・アワーが流れます。そしてジャズの音楽に乗って女性DJの声が。

「ピンセント伍長さん、あなたの田舎のスプリングフィールドでは、雪が積もって男手が足りないみたい。それにお父さんの牧場ではまた子馬が生まれたそうよ。無事に帰れてカワイイ子馬が見れることを祈っているわ。そこは穏やかで快適なところですね。今夜は面白いプレゼントを用意しています。もうしばらくお待ち下さいね」

 それからきっかり15分後、特攻機が突っ込んできます。そう、彼女の言うプレゼントとは爆弾を抱えた特攻機だったのです。放送内容と作戦の見事な連携が予告する死の予言。
 センスは絶妙、捕虜の手紙や数々の攻撃予告など、その内容は棘のあるエグいものであるにも関わらず、それは得体の知れない怖さと共に、不思議な魔力を持って米兵たちの心を虜にしてします。
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 もちろん、アメリカ本土の放送もありました。しかし、それは「頑張れ」とか、「応援している」とか、一方的なものでした。いわば士気の鼓舞のみを目的としたもの。東京ローズに較べて、一面的で見劣りするのは明らかでしょう。
 プロパガンダの嘘の中にも、
詳細な情報も混じっていると、予言のような様相を帯び、例えそれが恐怖を煽るものであっても、どうしても聞きたくなるのかもしれません
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「親愛なるアメリカ軍の皆さま、硫黄島攻略ははかどっていますか。今日はいいお天気なのに何人の水兵さんが命を落とすことになるんでしょうね。島には沢山の日本兵たちがあなたを殺そうと待ち構えているんですよ。」
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映画「父親たちの星条旗」より

◆東京ローズは原爆投下を知っていたのか?
 
 このように、このプロパガンダ放送は、捕まえた捕虜からの情報を元に、「なぜ、東京ローズはここまで俺たちのことを知っているんだ?」と米兵たちに思わせることに成功しています。
 それは、田舎の農場のリアルなエピソードであったり、米軍の動きを見透かされているような内容までありました。しかし、その中には超極秘の情報までが含まれていたというのです。

 ゴードン・トマスとマックス・モーガン・ウイッツの著書によれば、東京ローズはとある部隊を名指しで取り上げ、聴く者を驚かせているとのこと(オカルト・クロニクル )
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 名指しされたのは、アメリカ陸軍航空隊509混成部隊。彼らがテニアン島に上陸した時に、東京ローズはその事実に触れ、「死なないうちに帰りなさい」と囁いたとのこと。
 この放送を聞いて、心配になった関係者がいます。「なぜ、アメリカ全航空隊の中でも重要機密属するこの部隊の動向を知っているのか」と・・・。
 それから二週間後、再びこの部隊がやり玉に挙がります。。


「第509航空部隊の爆撃機は、尻に「R」の記号がはっきりついているから、日本軍の高射砲部隊はすぐ見分けられるわよ」

 そう、その爆撃機は、エノラ・ゲイ・・・・。この機体にその記号がペイントされたのは、そのすぐ前のことでした。誰もが知っている広島に原爆を投下したあの機体です。

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なぜ、東京ローズはこのことを知っていたのか。日本の軍部はこのアメリカの最高機密をすでに知っていたのか。陰謀論や都市伝説が発展していくことになるのです。真相は未だ闇の中です。

◆東京ローズは誰だったのか?

 戦争後半に米兵たちの心を魅了した「東京ローズ」。終戦を迎えて大挙した米兵たちは競ってこのアイドルを探すことになるのです。
 しかし、この時にはすでに番組は解散しており、押しかけた米国のマスコミたちは東京ローズは一体誰だったのかを必死で探すのです。

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米軍機、東京初飛行の機体に描かれた名前は「TOKYO ROZE」
それは全米兵たちのあこがれの女性の名前でした。

 そして、ついに私が東京ローズという女性が名乗り出てきます。彼女の名は、アイバ・トグリ・ダキノ。彼女はロサンゼルス生まれの米国籍の女性。1941年に叔母を見舞うために両親の祖国の日本に来て、太平洋戦争が始まりアメリカへの帰国の機会を失うのでした。
 タイピストの職からゼロ・アワーのDJを続けながらも米国籍を捨てることは拒否した、れっきとしたアメリカ日系人だったのです。

 実は東京ローズと呼ばれるDJは6人いたのでした。名しかし乗り出たのは、
アイバ・トグリ・ダキノただ一人。彼女は自分のサインにも「唯一の東京ローズ アイバ・トグリ」と書いたそうです。
 では、あの米兵たちを魅了した本物の東京ローズはどこへ・・。

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 実は後の調査で、ゼロ・アワーを担当していた女性DJの6人の中で、ジェーン須山(須山芳江)さんらしいということが分かったといいます。
 彼女も日系人だったのですが、その声は「南京の鶯」と言われるほどの「とても真似のできない声」「局を訪れた外国人が呆然と立ち尽くすほど、一瞬で虜にしてしまうような声」だったそうです。
 有名になったのはダキノさんの方でしたが、DJとして人気を集めていたのは彼女の方だった様です。しかも
ジェーン須山さんは、ちゃんと訓練を受けたアナウンサーでアイバ・トグリさんより大先輩。
 しかし、彼女は享年29歳、泥酔した米兵が運転するジープに轢かれて死亡していました。その事故の記録は米軍にも、日本警察にも残っていないとのこと。

気になる彼女の写真とその美声は、こちらのサイトを御覧ください
オカルト・クロニクル  東京ローズ――誰が伝説の魔女だったか

 さて、悲惨な運命は
アイバ・トグリさんにも襲いかかります。米国籍のままで日本のプロパガンダ放送に加担したという彼女は、アメリカで国家反逆罪に問われます。
 
彼女の名誉が回復されたのは、1977年。長い苦渋の時間を味合うことになるのです。

 米兵の誰もが知っている有名人であるにも関わらず、様々な謎を残したまま、東京ローズは歴史の中へと消えていくことになります。

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