一般に吸血鬼は、文字通り「人や生き物の血を吸う怪物」を総じて称しています。ですので世界各地にその伝承が存在するのですが、ヨーロッパでは、吸血鬼=ヴァンパイアと呼ばれています。
では、ドラキュラとは何かということですが、これは小説に登場する吸血鬼の具体的な名前なのです。イギリス時代のアイルランド人の作家、ブラム・ストーカーの恐怖小説『吸血鬼ドラキュラ』(1897年)に登場する男性の吸血鬼として登場しました
ですので、吸血鬼全般をドラキュラと呼ぶのは間違いですね。あくまでも吸血鬼を称する英語はヴァンパイア(Vampire)になります。
更にヴァンパイアは、ルーマニア語では「ノスフェラトゥ(不死身という意味)」とも呼ばれています。
ただ、狼男同様、小説や映画の影響は大きいので、吸血鬼=ドラキュラのイメージが定着しているかもしれません。
◆小説「ドラキュラ」のモデルは実在した。
この「ドラキュラ」の名前ですが、その発祥はルーマニアと言われています。それは、吸血鬼のモデルではないかという人物がルーマニア(当時はワラキア)に存在していたからです。
この人物は「ヴラド三世(ヴラド・ツェペシュ公)」でした(右画像)。彼がドラキュラと呼ばれ、自称もしていたのでは事実です。
これはヴラドの父がドラクルと呼ばれた事に起因していて、単にドラクルの息子「ドラキュラ」となるのですが、ドラクルは本来「竜(ドラゴン)」という意味から来ており、彼の父が「ドラゴン騎士団」に所属していたということからも呼ばれるようになりました。
このヴラド・ツェペシュ公、敵対した大量のオスマン帝国兵を串刺し刑にして、怖れられており「串刺し公」という呼び名も。さらには先程の「ドラクル(竜)」の語源には「悪魔」という意味がある場合もあり、実際の残虐なイメージとこれらの名称が映画の「ドラキュラ伯爵」を作り出したのかもしれませんね。
◆ヨーロッパ各地に存在する吸血鬼伝説
さて、このように現代のドラキュラのイメージは小説や映画によるものが大きいのですが、そもそも、そのような小説や映画が受け入れられヒットしたのも、それを受け入れる素地が民衆にあったからでしょう、吸血鬼の伝承は先ほどのドラキュラ公のいたルーマニア地方を中心にヨーロッパ各地に残されています。
「一度死んだ人間がなんらかの理由により不死者として蘇る。血は生命の根源であり、よって死者が血を求めるのは道理である。噛まれた者も死後吸血鬼となる。」未知の伝染病の蔓延を思わせるようなこれらの伝承は、ヨーロッパのみならず世界各地に残されています。
ギリシア神話のラミアーや、古代バビロニアのアフカル、テッサリアの巫女、ブルーカ(ポルトガル)、ドルド(ドイツ)、アラビアのグール、中国のキョンシーもそれにあたるかもしれません。
吸血鬼伝承の形態はこのように、一度死んだ死者が血を与えられたことによって再び生き返ってくるという意味では一致しているようです。
キリスト教のキリストの復活伝説もこれと関係しているのかもしれませんね。キリスト教でも血は神聖視されていますし。
◆映画での吸血鬼
このように、西洋現代の吸血鬼のイメージは、小説や映画によるものが決定付けたといえますが、その映画とは一体何だったのでしょうか。
先に女吸血鬼ともいえる小説がありました。
アイルランド人作家シェリダン・レ・ファニュが著した『カーミラ』(1872年)です。
この小説は、古来から伝わる吸血鬼伝承をシェリダンが自分なりの解釈でまとめ上げたものですが、この影響を受けて、ブラム・ストーカーの恐怖小説『吸血鬼ドラキュラ』(1897年)が出来たことから、本作がドラキュラの祖とも評価されています。
ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』はドラキュラの名を世界中に広げた功績のみなならず、モデルとされたウラド公の地元、ルーマニアのトランシルバニアの観光にも貢献しました。地元では郷土の英雄を怪物扱いすることに対して複雑な思いも抱いているようですが・・・。
また、この小説に出てくる、吸血鬼を退治する エイブラハム・ヴァン・ヘルシングという登場人物は、吸血鬼ハンターの代名詞的存在として有名になっています。
さて、このドラキュラの小説をベースにした戯曲や舞台劇が1920年代から始まります。世界最古の吸血鬼映画『ノスフェラトゥ』(1922)、そして、映画『魔人ドラキュラ』(1931年)、舞台劇の『ドラキュラ』(1938年アメリカ)などの大ヒットで、現在のドラキュラのイメージが固まったといえるでしょう。
1958年の映画「吸血鬼ドラキュラ」はホラー史上屈指の名作ともいわれています。
最近では、ドラキュラのイメージを超えて様々な解釈の映画が作られていますね。ヴァンパイア・ハンターを主人公としたもの、ドラキュラとの恋愛ものなど、様々な面白い映画が出来てます。
原点に帰り、1992年の『ドラキュラ』(アメリカ)は、何十年かぶりにブラム・ストーカーの小説を原作とした映画になってラブロマンス中心の映画に仕上がっています。。
◆吸血鬼の退治の仕方
これも映画の影響があるのですが、不死身と言われる吸血鬼にも弱点があるのです。
有名なのが
・陽の光に弱い〜吸血鬼が日光に弱いという演出を最初に行ったのは1922年の映画『ノスフェラトウ』からだそうで、以後の映画ではこの演出が頻繁に使われるようになり、一般化しました。
・にんにくが苦手〜古来エジプトではにんにくは万病に効く薬として重宝されていました。にんにくはパワーの源でもあるので撃退するには良いものなのでしょうね。
・十字架が苦手〜キリスト教の影響から来ていますが、信仰心がないと効き目が薄いとも。
欧米社会やアジアでは盛んな吸血鬼伝承。 日本では、普段動物の血を見る文化ではないので、西洋に較べて吸血鬼伝承は少ないようです。こういう文化の違いからみる怪物伝承も面白いものだと思いませんか。
さて、次回は、フランケンシュタインです。これも映画の登場人物ですが、ドラキュラや狼男のように古来からの伝承にあたるものがあるのでしょうか。興味がありますね。
|
|
|
この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。
コメント 0