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奇妙な死骸

 管理人が小学校高学年の夏の間だけ、しかも荒川の河川敷だけで体験した不思議な話を綴っていきたいと思います。
 それは、体験した仲間たちの間で、いつしか”荒川トワイライトゾーン”と呼ぶようになり、大人になってからも「あれはなんだったのだろうか」と語るようになった不思議な話です。

 今回はとある生き物?の死骸の話です。グロテスクな描写もあるので、苦手な方はご遠慮ください。




③奇妙な死骸。

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 子供というのは、自分たちの”遊び場”というフィールドは細かいところまで、よく覚えているものである。どこに何があるか。足をかけやすい場所、滑りやすい場所、木々の形など、その特徴は身体に染みこんでいる。
 そのフィールドの危険度をレベルに分けていて、いきなり危険度MAXに挑戦するような無謀なことはしなかった。
 徐々に慣れていき、フィールドを身体に覚えてから少しずつ遊ぶようにしているのである。 
 数日前から慣れていき、いよいよ新たなフィールドで思い切り冒険遊びをしようと試みた、ある日のことである。
 
 荒川から少し入った奥の川辺のエリアで奇妙な死骸が打ち上げられているのを仲間の一人が発見した。ここは、ところどころに底なし沼のような場所があり、危険な箇所がいくつもある場所である。
 慎重に遊びながらフィールドを把握したばっかりの場所だった。
 
 「なんだぁ?」と周囲の誰もが振り返る大きな声。
 近くにいる者からその声の主の方へ近づいていくと、「うえぇ」とか「ぎゃぁぁぁ」など声にならない悲鳴が次々と聞こえる。
 
 私は一番遠くで、長い枝を探している最中だったので、藪から顔だけ出し、みんなが集まっている方を覗くと、なにやら、一箇所にみんなが集まっているのが見える。
 
 「お〜い!ワンモア(管理人の名前)!ちょっと来てみろよ!」
 
 近くに行くと、なにやら大きな死骸がある。猫か犬の死骸かと思った。
 しかし、その大きさがなにやら違う。
 ずぶ濡れの毛むくじゃらの死骸なのだが、円錐形をしている。
 あぁ、一匹じゃなくて何匹も重なっているんのか 。
 
 しかし、なんでまた?
 
 更に近づいてみると、違和感に気がついた。
 円錐形の毛むくじゃらの物体から足かしっぽのようなものが合計6本出ているのだ。
 
 犬ならしっぽを含めても5本・・・。6本なら2匹が重なっているか。
 
 気持ち悪さよりも興味の方が湧いてきて、ちょうど手にしていた長い木の枝でその死骸をこずいてみた。
 
 ちがう。犬や猫じゃない。それは本当に円錐形をした生き物なのだ。
 足らしきものもよくみると、大きな爪がひとつだけある。それは馬の蹄を連想させた。
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 「なんだ?これ?何の死体だぁ?」
 
 不気味でもあり、そこから離れたいと思うのだが、これが何の死骸なのか知りたい気持ちもある。
 死骸を触れる唯一の手段である木の枝を持っているのは私一人・・・・。
 仲間の声に押されるように、その生物の正体を確かめるべく、足なのか、触手なのかしっぽなのか分からない根本を探ってみた。
 持ち上げてみた。ずしりと重い感触が木を通じて腕に伝わる・・・。
 気持ちが悪い。
 根本を確かめた。たしかに6本のソレはその円錐形の固まりにつながっている。
 そう、それは、一つの生物であるのは確かなのだ。
 
 みんなの頭の中の図鑑を総動員して、これが一体なんの生物なのかを考えたが、結論がでなかった。
 
 もしかすると、未知の生物かもしれない・・・。
 
 家にはうちの父がいる。怒られるのは承知だが、この生物が知りたい。
 我々は叱られるよりも、この生物の正体を知りたいという好奇心の方が勝り、大人を呼ぶことにした。
 
  家につくなり、事情を話すと「あそこで遊んだらダメだと言ったろう!」とまずゲンコツ。とにかく来てくれと懇願し、父は何週間も土手に置きぱっなしになっているスコップを取りにいくという名目でついてきてくれた(このスコップに関係した不思議な話もあるのだが後日)。
 
 土手の上から、例の場所を指さし、そこへ向かう。
 しかしである。例の遊び場がなんか様子が違う。
  
 そう、今まで遊んでいた形跡がないのだ。さっきまで遊びまくっていた、泥の足跡などがないのだ。
  そしてなによりも例の死骸がなくなっていたのだ。
 もちろん、そのまわりを歩きまわった我々の足跡も綺麗になくなっている。
 我々が、遊び場を間違えるはずはない。
 川辺のかたち、木々の形、そのフィールドは間違っていないはずである。
  我々は軽くパニックになった。
  さっきまで遊んでいたはずなのに、そこには死骸をはじめ、みんな痕跡が消えているのだ。
 我々の訴えを父は相手にせず、家から持ってきたスコップを取ると、みんな帰るぞ、ここは危ないんだから遊んじゃダメだと再度注意を受けた。
 
 散々、遊びまくって、そこら中、我々の足跡だらけだったはずの場所。見慣れた土の盛り上がり、川辺のかたち、我々が遊び場のフィールドを間違えるはずがない。
 海ではあるまいし、足跡を波がさらっていったなど考えらない。

  そして、あの死骸は、いったいどこへ消えてしまったのだろう。
 
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荒川での不思議な話(随時更新)

 
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