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もう、数十年前になる夏の夜のこと。北関東のとある会社の独身寮に入っていた私は、週末は、実家のある東京に帰り、昼間は東京で遊んでから日曜の夜に寮へ戻るということを繰り返していた。
その日は、久々に同じ寮の仲間と東京で遊び、いつもよりも遅い時間に寮へ戻ることになった。
時間は夜中の12時近く。帰りの車の中は男二人である。
「遊び過ぎたなぁ。」と昼間の楽しい話題に花を咲かせながら道中を走っていた。
当然この時間帯は空いているので、細い１車線ではあるが、かなり飛ばせる。
このペースなら早く寮に戻れて、明日の出社に支障がない位の睡眠時間が確保できるだろうなどと話ながら運転していた。
と、県境に近いところで、遅い車に追いついてしまった。前の車両の赤い尾灯がみるみる迫ってくる。
内心、舌打ちをしながら、その先を目で追うと、その前にも車が何台か見える。
「前方にすげぇ遅い車が走っているな。トラックか？」 助手席のイライラがこちらにも伝わる。かなり遅い・・。40 km制限区間を30km足らずのタラタラ運転である。真夜中に近いというのに。
しかし、この道は何度も通っているので、この先は、ほどなく2車線になるのが分かっていた。
「しかたない。もうすぐ２車線になるから、それまで我慢するか。」
やがて2車線に入った。
「自分以外にも、イライラしていた車がいただろうなぁ。まず先に入れさせてやるか。」と思うが、右車線を抜けて追い越そうとする車が出てこない。2車線になってもみんなノロノロ運転なのだ。
ちょっと違和感を感じつつも、右車線に入り、前の車を追い抜こうとした。
左前方に見えたのは、夜中に見たこともない何十台もの車の列である。
「なんじゃ？こりゃ、みんな仲間の車なのか？」
と友人と会話しながら、追い抜きがてら相手の車の運転席をのぞいてみた。
運転席に見えるドライバーたちの顔・・・。
それは作業着姿もあり、背広姿のドライバー、一人で運転している者もいれば、カップル、家族連れもいるようだ。後ろの席の子供も見えたが、みんな黙って前を向いて座っている。すべての車が抜かすこともなくノロノロと運転をしている。
買い物帰りのような主婦や、老夫婦など、この時間帯に走るにしては場違いな車もある・・・。
助手席にいる知人は「えぇ？・・・なんだこれ？」とガラスにべったりと顔をつけて、過ぎてゆく車の中を１台１台凝視している。
彼らに共通しているものは何もない。一様にみんな前を真っ直ぐ向いてユルユルと走っているだけなのだ。
「気味悪いから、全部抜かそうぜ！」「おぉ。」同意した。
まもなく１車線に戻る・・・・。それまでにこの列の先頭に出たい。
しかし、先頭車両がまだ見えない。どこまで続いているんだこの長い行列は？
どうしても先頭の車が気になった。２車線といっても狭い道なのでそんなには飛ばせないが アクセルをふかし、１台１台と抜かしていく。
知人はベッタリと窓に張り付いたたまま、抜いていく車を1台1台凝視している。
先頭車両が見えた。それは、この真夜中の大行列を先導しているようにも見える。この渋滞の張本人だ、なんとしても確かめてやる。
先頭車両はみるみる近づいてきたが、速度を緩め並走することにした。じっくり見るためである。相手が不審がるかもしれないがかまわない。どんな奴が運転しているのか、どうしても確かめたいのだ。
車が並んで、二人でその先頭の車をのぞき込んだ。
そこには、背広姿の男が二人乗っていた。どこにでもいるような背広姿の男。極めて普通である。しかし、こちらの視線を思い切り感じているだろうにも関わらず、こちらを見ようともしない。無視しているかのようにその目は真っ直ぐ、そしてゆっくりと無言で走っているだけである。
言いようのない不気味を感じ、アクセルを踏み、再び加速して抜いた。
ポツリと友人が言った。「誰もこっちを向かなかったな・・・・。」
一体何の集団だったのだろうか・・・・・・。
やがて交差点が見えてきて赤信号になった。我々の車は当然止まる。後ろが気になる。先ほどの集団が追いついてこないだろうか。信号の赤がいつに増して長く感じる。
しかし、後ろからライトは見えてこない。抜かしたとはいっても充分に追いついてくる時間であるだろう。見えてもいいはずな時間だ。
交差点には我々の車1台だけである。長く感じたその信号は青になった。
色々な人が運転していた夜中の車の大縦列。それ以降、その集団は見ることはなかった。
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ご訪問とniceありがとうございます。
by なんだかなぁ〜!! 横 濱男 (2014-04-23 20:46)
こんにちは。
ご訪問、nice! ありがとうございます。
by YUTAじい (2014-04-24 09:53)
興味深い体験ですね。
何かの宗教団体が移動中だったのでしょうか。
by アヨアン・イゴカー (2014-08-09 16:53)