小学校の頃、友人たち4、5人とかくれんぼをして遊んでいた。
場所は、東京・荒川の土手沿いにある公務員住宅の敷地内で、友人の一人が住んでいる場所だった。
5階建てのコンクリート住宅の前に住民たちのプレハブの物置小屋がある。
引き戸をガラガラと開け、棚に昇り、段ボールの間に横たわり、上にベニヤ板を置いて完全に隠れることに成功した。
段ボールと段ボールの隙間を少しつくり、外の様子も見れるようにした。
「わー!」「見つけたー!」など外の声がガヤガヤと聞こえる。
鬼役の友人がガラガラと扉を開けて入ってきた。
息を抑え頭を下げる。
「あれー?いないなあ?」とガタガタと探し回る音、緊張しつつも笑いを堪えながら息を潜めて身を縮めている。
そのうち、ガラガラと閉める音と外に出て行く音が聞こえた。見つからなかったことにしめしめと思いつつ、外の様子を伺う。
僅かな光が差し込む暗闇の中に誰かがいる・・・・。
女の人だ。
背中を向けて立っていた。紺色のセータに肩まで髪がある。
「やばい。この倉庫の家の人かも・・・・。」
見つかったら怒られると怯えながらもそっと様子を伺うと、何もするでもなく背中をこっちに向けてじっと立っている。
「何をしているんだろう?なんでここにいるの・・・?」
どのくらい時間がたったのだろうか。
友人たちの外の音も聞こえない。静寂の空気のなか不安になってきた。
みんな、どうしたのだろう。もう一度探しにきてくれないだろうか。
沈黙の時間だけが過ぎていき、疲れてきて頭を下げたとき、女の人が動きはじめた。
はじめは静かに、ガサッと。何かを探しているらしい。
ベリっというダンボールを開ける音もする。
「まずい!動き始めた。見つかる!」
そのうち探しものが見つからないことに怒りが出てきたのか、
荒々しい音に変わってくる。
ガン、ガン、ベリッ、ベリッ!ベリベリ!
「ヤバイ!見つかったらどうしよう!」
ふと、静かになった。
何も聞こえない。聞き耳を立てるが何も聞こえない。先ほどまでの荒々しい物音もなくなった。
いつのまにか外へ出たのだろうか。
顔を少し上げて段ボールの隙間から様子を伺う。
段ボールの箱の隙間越しに目があった!
かっと見開いた大きな目が直ぐそばにあった。
「うわーっ!!!!!」
びっくりした身体が勝手に反応し、段ボールを押し倒した。
自分の大声と物が崩れ落ちる大きな音とほぼ同時に「なんだ!」と扉をガラガラッ開ける音がした。
友人たちがすぐ外にいたらしい!お互いにいきなり現れたものだから「わー!!」「うあー!!」と声にならない叫び声が応酬した。
いきなり出てきた友人たちにも驚いたが、すぐに女の人を思い出した!
まずい!驚いたあまり、段ボールを蹴って女の人の顔面を直撃をしてしまった!
急いで、棚から降りた!
「ごめんなさい!大丈夫ですか!」
「?誰に謝っているんだ??」
女の人の姿はどこにもいなかった・・・。
その場にいてはいけない気がして、なぜかみんなで走ってその場から逃げた。
その後、聞いた話では、自分が見た女の人は友人たちは誰ひとり見ていない。
また、なかなか見つからないので、もう終わりにしようと、大声で自分を呼んでいたらしい。しかもその場所は自分が隠れていた倉庫の真ん前だった。
しかし、自分は友人たちの呼ぶ声を聞いていない。自分を置いて帰ってしまったのではないかというくらいに物置小屋の中は静寂な空気だった。
なぜ、友人たちの声が自分には聞こえなかったのか。そしてあの女の人はどこへ消えたのか。
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2014-04-13 19:56
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