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消息機はどこへ?バミューダトライアングルの謎

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 バミューダトライアングル。それは、フロリダ半島の先端と、大西洋にあるプエルトリコ、バミューダ諸島を結んだ三角形の海域。
 昔から船や飛行機、もしくは、その乗務員のみが消えてしまうという伝説があることで有名な地域です。
 この伝説に基づいて、多くのフィクション小説、映画、漫画などが製作されてきました。

 

 100年以上も前からこの地域は海の遭難事故も多く、魔の海域と恐れられていましたが、この海域が世界的に有名になったのは、戦後間もない1945年12月5日、大西洋上でアメリカ海軍の5機と救助に向かった飛行艇がこの海域で行方不明になった事件からです。

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 この12月5日の午後、アメリカ海軍・第19飛行小隊、通称「フライト19」のアベンジャー雷撃機(右画像)、5機が訓練のために、フロリダのフォート・ローダーデール海軍基地を飛び発ちました。指揮官はテイラー中尉。

 その日は、快晴でした。しかし帰還予定時間を少し過ぎた頃、無線が入ります。

「タワーに告ぐ!!こちら指令機。緊急事態発生。我々はコースをはずれたらしい。陸地が全く見えない・・・。」

 現在位置を訊く管制官にテイラー中尉は答えます。

「それが分からない。どこを飛んでいるのかさっぱり分からない。」


 とにかく西へ向かえと指示するタワーに、テイラー中尉の声が返ってきました。

「どっちが西か分からない・・・。奇妙だ・・・。何もかもおかしい。方向がつかめないし、海の様子もいつもと違って妙に白い。」

「現在16時25分。現在地は不明。迷ってしまったらしい。・・・うわっ!白い水に突入した!!」

 そして、またテイラー中尉の声が入ります。

「ここはどこだ?いや、基地の北東360キロ・・・。」
「見ろ!!我々がいるところは・・・。」

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 この無線通信を最後に、テイラー中尉以下編隊の5機は完全に消息を絶ってしまいます。
 そこで捜索のために、乗員13名を乗せたマーチン・マリナー飛行艇(左画像)が、至急、現地へ向かいました。
 ところが、こちらも離陸数分後に無線連絡をしたきりで、同様に消息を絶ってしまいました。
 不思議なことに、海軍が船で海上を捜索しても、飛行機の破片や、残骸などの浮遊物が、何も見つからないことから奇怪な事件として有名になります。
 その後、今までの海難事故も含めて、様々な消失事件が発生します。その数、なんと50件以上・・・。
ざっと上げただけでも海難事故は、


1880年1月イギリス海軍の船アトランタ号。乗員300人と共にバミューダ島近くの海で行方不明。
1920年4月フランスの客船オブライエン号。乗員150人と共にフロリダ沖で行方不明。
1926年3月アメリカの貨物船サダフコ号。乗員26人。
1950年6月スペインの貨物船サンドラ号。乗員85人と共にハイチ近くで行方不明。
1966年12月メキシコの輸送船サザン・シティ号。乗員16人と共にカリブ海のハイチ近くで行方不明。
1970年 ミルトン・イアリトリード号(フランス貨物船)
1973年 アニタ号(ドイツ貨物船)

航空機事故は、
1947年、アメリカ陸軍C54輸送機がキューバ上空を過ぎた後、行方不明。
1947年、アメリカ空軍C46輸送機が32人の乗員を乗せてバハマ上空で行方不明。
後日、C46輸送機の機体がジャマイカのブルー山脈で発見されたが、機体だけであり、乗員32人の死体は一体も発見されなかった。
1947年にはスーパーフォートレス機
1950年にグローブマスター機、
1952年にスーパー・コンステレーション機、
1954年ロッキード・コンステレーション機、
1956年マーティン型水上艇
1963年9月アメリカ空軍C133カーゴマスターが10人の乗員を乗せて大西洋のアゾレス諸島で行方不明。


とおびただしい数の消失事件です。

原因について様々な憶測が飛び交い、

ここの海底に、UFOの基地があるのではないか。

ブラックホールが存在し、その中に吸い込まれるのではないか。

空間の歪みが起きている。それにより他の次元に迷い込んでしまうことも。

気化した大量のメタン・ハイドレートによって、海中に引き込まれているのでは。

などと、オカルトマニアや都市伝説系の好きな方々を大いに盛り上げることになります。
 最初の航空機消失事件であるアベンジャー機「フライト19」などは、スピルバーグ監督の映画「未知との遭遇」のワンシーンでも使われるほどでした。


 さて、これだけ世間を賑わした「バミューダ・トライアングル魔の三角海域」ですが、アリゾナ州立大学の図書館員である、ローレンス・D・クシュという人がこのバミューダ・トライアングルの謎を徹底的に調べます。
 きっかけは、1970年代、バミューダ・トライアングルの伝説が盛り上がっていたころ、図書館にこの件について問い合わせが殺到したことによります。
 興味を覚えたローレンス氏は自分で調べることにしたのです。
 彼は50件以上の消失事件を調べ上げました。

 調査の結果は・・・それは、ガッカリの極みでした・・・・。

 事件の1/4はそもそもその海域の事故ではなく、また実際には悪天候による事故がほとんどだったそうです。
a1320_000148.jpg この海域は、また非常に激しい気象で知られ、多くのハリケーンを産みだす場所でもあります。
 この海域のバミューダで発生するハリケーンは海が荒れた時には波の高さは15m、6階建てのビルと同じ高さになることも。風速も80mに及ぶこともあり、これは日本の「猛烈な台風」の風速が50m余りに較べても、どれだけ荒い気象かが容易に想像できます。

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 さらに科学的に分析していくと、局地的な天候の変化が激しく、わずか50mの範囲だけが嵐になったり、ほんの少し離れた場所では、全く天候が違ったりすることも。竜巻や雷雲もよく発生し、落雷も多いそうです。
 発生する巨大波ですが、この波に乗り上げて叩きつけられると昔の船体だと、真っ二つに破壊され、SOSを出す間もなく沈没したのではないかと言われています。そういえば現在ではこの海域の消失事故は聞かれませんね。

 これらの調査結果などにより、今まで謎とされていた事故は、そのほとんどが通常の海難事故か、尾ひれがついた誇張されたもの、そして全然違う海域で起きた事件であることなどがわかりつつあるそうです。

 最初のアベンジャー機「フライト19」消失事件も、実際は急な悪天候が発生したにとに加えてテイラー中尉以下、パイロット達の訓練不足が重なったことで起きたものだと現在では考えられています。
 波高15m近い荒波の中、痕跡一つ残さず海底に沈んで行っても何の不思議もありませんでした。  
 なお、このエピソードの 紹介の際に語られることが多い「どっちが西かも分からない」「白い水に突入」などのセリフは、実際の通信記録には存在しないそうで・・。
 話を面白くするために尾ひれがついてしまったのですかね。
 
 さらに救難に向かったマリナー飛行艇ですが、静電気による引火・爆発説が有力です。この飛行艇は燃料漏れなどを頻繁に起こす欠陥があり、「空飛ぶガスタンク」の悪名をとっていました。
 実際、救助に向かったこのマリナー飛行艇に緑色の不思議な光がまとわりついている のを目撃した地元住民がおり、いわゆる「セントエルモの灯」(悪天候時、船舶や飛行機等に発生する静電気によるコロナ放電)がガソリンに引火したと言う説が有力です。

 うーん、偶然が重なったのでしょうか。ちょっとがっかりですね。
 でも、魔の海域であることには違いありませんね。

 それに、100件のうち、もし99件が解明できても1件でも未解決な事件があれば、それは本物であるということも否定できませんから、謎は謎として残しておくのも夢があっていいかもしれません。
 ローレンス・D・クシュ氏の渾身の一冊「魔の三角海域」は1970年代に角川文庫から発刊されていましたが、現在は絶版となっております。
Amazonでも扱っていないプレミアムがあると思われる本ですので、古本屋で見つけたら是非、購入しておくことをオススメします。





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